名作映画『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督の作品で、イタリア映画になります。
あらすじを読んで気になり、評価も高めだったので見てみました。
途中から予測はつくものの、衝撃的な結末で、賛否両論分かれる作品だと思います。
個人的には、記憶に残る独特な作品に感じました。
Overview –概要–
原 題 :La Migliore Offerta(英題:The Best Offer)
製作年 :2013年
製作国 :イタリア
ジャンル:ミステリー、ラブロマンス
上映時間:2時間11分
年齢制限:PG12
監 督 :ジュゼッペ・トルナトーレ
脚 本 :ジュゼッペ・トルナトーレ
メインキャスト
ヴァージル – ジェフリー・ラッシュ
ビリー – ドナルド・サザーランド
ロバート – ジム・スタージェス
クレア – シルヴィア・フークス
フレッド – フィリップ・ジャクソン
サラ – リヤ・ケベデ
ランバート – ダーモット・クロウリー
バーの女性客 – キルナ・スタメル
あらすじ
天才鑑定士で一流オークショニアのヴァージルのもとに、若い女性から家族が遺した美術品を鑑定してほしいという依頼が舞い込む。その屋敷を訪れるも、依頼人は口実を重ね一向に姿を現そうとしない。ヴァージルは不審を抱くが、その屋敷で、本物であれば歴史的発見となる美術品の一部を発見してしまい、依頼を断れずにいた。やがてヴァージルは、依頼人の姿を見ることを渇望するようになるのだが…。
Opinion –個人的な感想- ※ネタバレ含む
ミステリーからラブロマンスへ
あらすじからすると「依頼人の正体と目的は?!」「屋敷に隠された歴史的美術品とは?!」と謎が深まり、気になるところですが、だんだんとミステリアスな謎解きから主人公の淡い恋物語へとテーマが変わっていくような感じです。
そして最後のどんでん返しというかオチが・・・恐らくバッドエンドに感じる方がほとんどだと思います。
なぜなら、主人公からしたら恐ろしいくらいのバッドエンドだからです。
途中から、なんか話が上手すぎる・・・嫌な予感がする・・・と思ってきますが、予想的中です。
主人公ヴァージルに感情移入するか、彼を客観的に見れるかによって、この映画の捉え方が変わってくると思います。
画像引用元:Amazon
顔のない依頼人の正体(ネタバレ)
「交通事故に遭った」だの「急な発熱」だの、口実を重ねて姿を現さない依頼人に、我々視聴者も興味を引かれます。
その正体は、極度の広場恐怖症で引きこもりの、美しい女性でした。
そのため、姿を現すことができなかったのです。
しかし、この「長年引きこもっていたとは思えないほどの整った美しい美貌」というのがある意味、彼女の本性を見抜くカギなのですが、美女にはつい騙されてしまうというか、恋は盲目というか・・・まさにファム・ファタール(男を破滅させる魔性の女)です。
感謝したり「あなただけ・・・」というような素振りを見せ、心を開いてきたかと思えば、急に怒り出して拒絶したりと、まあ翻弄の仕方が上手いというか、すごいです(笑)
おまけに相手のヴァージルは女性経験がゼロなのだから、余計に転がされてしまいますよね。
さらなる彼女の本性は以下に説明していきます。
画像引用元:Sky Guida TV
物語の真相(ネタバレ)
事の真相は、主人公ヴァージル以外の登場人物はほぼグルで、彼を騙し、彼が人生をかけてコレクションしてきた「女性肖像画」のすべてが盗まれてしまうのでした。
以下に関係性を(表の顔|裏の顔)でまとめます。
- 主人公ヴァージル(天才鑑定士|カモ・被害者)
- ビリー(ヴァージルの仕事仲間・共謀者|首謀者)
- クレア (ヴァージルの依頼人→恋人|ビリーの共謀者、広場恐怖症も嘘)
- フレッド(クレアの使用人|ビリーの共謀者、使用人ではない)
- ロバート(腕利きの修理工|ビリーの共謀者)
- サラ(ロバートの恋人|ビリーの共謀者)
- ランバート(ヴァージルの部下|裏の顔はなし)
- バーの女性客 (驚異的な記憶力を持つ小人症*の女性|屋敷の本当の持ち主)
*遺伝的・体質的因子やホルモンなどの異常で低身長を示す病態
ビリーを首謀者として他4人が共謀し、計5名の犯行です。
部下のランバートとバーの女性客は、詐欺には関わっていません。
女性客は、屋敷での出来事をすべて向かいのバーから傍観していましたが、屋敷はロバートに「映画の撮影」のために貸していただけに過ぎません。
そして彼女の名前こそが「クレア」でした。
美人依頼人・偽クレアの本当の名前は謎のままです。
ビリーが引退したヴァージルに、うっかり「会えなくなると寂しいよ」と言ってしまうのも、伏線でしょう。
(引退しただけで会えないわけではないのに、後に主犯である自分が姿を晦ますため)
画像引用元:IMDb
機械人形(オートマタ)は本物か
明確な描写はありませんが、ヴァージルを騙すために用意されたものとすると、偽物と考えるのが妥当かもしれません。
しかし、このオートマタは本作において様々な意味を持つ重要な象徴物であるようです。
1.ヴァージルが依頼を受けるきっかけ
屋敷に転がるオートマタの部品に興味を持たなければ依頼を断っていたでしょう。
2.ヴァージルの心境
オートマタが完成していくのと、ヴァージルの恋心が燃え上がっていくのがリンクしているとのことです。
ロバートの台詞「ふたり(ヴァージルとクレア)の歯車は動き出した」という表現が絶妙です。
3.本物のクレアがバーの女性客であること
かなりわかりにくいですが、オートマタについて「中に小人が入っていた」「常に正しいことを言った」という説明があるのですが、バーの女性客は小人症で、ずば抜けた記憶力を持っている(真実を語る)からです。
画像引用元:La migliore offerta | Giuseppe Tornatore – Underground
天才鑑定士ヴァージルという男
誇りある仕事を辞め、人生で最初で最後の恋人を失い、生涯かけて集めてきた最愛のコレクション(肖像画の女性たち)をすべて失ったヴァージルは、もうホームレスのようないでたちでした(老後の資金は潤沢にありそうですが)。
そんな彼を見ると、淡い恋心を弄ばれすべてを奪われた、なんとも残酷な話だと思ってしまいます。
ただ、主人公ヴァージルを客観視、というよりかなり冷たい目線で見れば、まだこのオチも受け入れられるかもしれません。
つまり、彼がかなり変人であり、嫌な男だと思い込めば、まだ救われます。
冒頭の「白髪染め」のシーンも印象的で、どことなく不快感を感じます。
そして行きつけの高級料理店でひとり食事をするヴァージル。
食器にはすべて自分のイニシャルが入っており、一流のオークショニアとして有名だからか、周りのお客からチラチラと見られています。
そしてお店からサプライズで誕生日ケーキを用意されるのですが、なんと1日早かったようで一口も口にせず、ろうそくが溶けきってからその事実を明かし店を後にします。
この描写に、「お高くとまった嫌な奴」「せめて一口でも食べればいいのに」と思うこともできます。
また屋敷の向かいのバーでも、失礼なことにお茶を頼んでも一口も口にしません。
(最後、騙された後にようやく口にします。)
その他も、仕事柄なのか潔癖症なのか常に手袋をしており(またこの高そうな手袋も膨大なコレクションがあります)、受話器を取る際もハンカチで直接触れようとしません。
依頼人に雨の中待たされれば大激怒したりと、ぞんざいな扱いを受けるとすぐにキレ出したり、ちょっとしたことですぐ人を疑ったりします。
女性とは目を見て話すこともできず、従業員がすれ違いざまに挨拶しても無視。
女性に対する、というより、人としてコミュニケーション能力が乏しいとも言えるかもしれません。
そんな偏った彼の性癖は「女性肖像画」のコレクション。
基本いつも手袋をしているのに、肖像画の女性たちに触れるときは素手という・・・
部屋の壁一面に飾られた肖像画のシーンは、芸術的とも言えますが、異様な光景とも言えます。
ビリーと長年手を組んで、このコレクションを不当に手に入れてきましたが、そんなビリーに「内なる神秘性が欠けている」と言い、彼の絵の才能を最後まで認めなかった非道な性格です。
そして、このビリーの絵の才能をけなし続けてきたことが、今回の事件の原因と考えられるでしょう。
画像引用元:Netflix Lovers
詐欺師の目的
主人公ヴァージルからたくさんの「女性肖像画」を盗んだビリーたち。
彼らは単なる金目当ての嫌な奴らではないことが、映画を見ていて感じるところです。
たった1枚残した肖像画(踊り子)は、実はビリーが描いたもので、裏に「ヴァージルへ 親愛と感謝を込めて ビリーより」とサインがあり、皮肉たっぷりです。
先程も述べたように、絵の才能を認めなかったことをずっと根に持っていたのでしょう。
途中オークションでヴァージルとビリーの作戦が失敗し、ある画家の熱心なコレクターである夫人がその画家の贋作を競り落としました。
しかし、ヴァージルは贋作ではなく本物(別の画家の作品)だと気付いており、自分が安く手に入れるため「贋作」として競売していたのです。
後から本物と知らされたビリーは、恐らく申し訳ないと思い、夫人から買い取ったのだと思います。
つまり、彼は良識のある人間ということではないでしょうか。
機械修理工のロバートも、オートマタの修繕について「金が目当てじゃない」と言いますが、詐欺行為に対しても言っているのではないかと思います。
ロバートはヴァージルに恨みつらみはないと思いますが「天才鑑定士の目利きを騙せるか」ということに技術者としてのプライドがあったのかもしれません。
彼が仕上げたオートマタは、物語で度々出てくる重要な台詞「いかなる贋作の中にも必ず本物が潜む」という言葉を発しますが、自分の作品(オートマタ)の価値を誇示しているようですね。
画像引用元:Stanze di Cinema
クレアの愛は本物か
ロバートと同じく、ヴァージルに何の恨みもないはずのクレア。
騙された後、ヴァージルは「あれは全部嘘だったのか」と度々クレアとの愛の情事を回想します(個人的に初老と美女のベッドシーンがあることに驚きでした・・・)。
客観的に見ても「騙す目的でよくここまで演技できるな」と思うレベルです。
しかし様々な描写から、クレアの愛は本物だったと捉えることができるので、紹介します。
1.電話での台詞
小説家だという彼女の仕事の電話で「最終章を明るいエンディングに書き直す」と言っていました。
小説の結末について語っているように思われますが、事実彼女は小説家ではないので、もしかしたら電話の相手はビリーかロバートで、ヴァージルに対する詐欺行為についての要望を言っているのかもしれません。
(ちなみに、ヴァージルの部下があらゆる出版社に問い合わせても、クレアらしき小説家を探し出せないのも伏線でしょう。)
2.贋作に残すサイン
作中でヴァージルは「贋作者は作品の中にサインを残す」と語っているのですが、ビリーは自分の絵画の裏にメッセージを、ロバートはオートマタ自体を残していきました。
しかし、クレアは何も残していないことから「贋作者」(詐欺者)ではなかったと主張しているようにも思われます。
3.最後の台詞
ヴァージルの秘密の部屋(女性肖像画の部屋)で彼のプロポーズに快諾し、「たとえ何が起きようと、あなたを愛しているわ」という意味深な返事をします。
つまり詐欺行為が行われても、彼女の気持ちは本物なのだと言っているのではないでしょうか。
プロポーズを受けて感動して涙を流しているのも、嘘ではなく本物だと思いたいですね。
その他、強盗から暴行を受けて病院に運ばれたヴァージルに付き添うクレアの姿も、心から心配しているように見えました(たとえ強盗が雇われで、やらせだったとしても)。
画像引用元:Giornal.it
作中で最も重要な台詞「いかなる贋作の中にも必ず本物が潜む」は、クレアの愛が本物であることを言っているのかもしれません。
物語は、クレアの話していたチェコ・プラハの奇妙なレストラン「ナイト&デイ」が実際にあったことに淡い期待を抱き、「連れを待っている」と言って独り席に着くヴァージルで締めくくられます。
せめてここにクレアが現れてくれれば、まったく別の作品に生まれ変わると思いますが、現実的というか、シビアな終わり方でした。
でももしかしたら、いつか彼女と再会できるかもしれませんね。
芸術を堪能できる作品
主人公が鑑定士ということもありますが、本作にはたくさんの芸術品や高級品が登場します。
ヴァージルの仕事場も高級住宅も洗練されていますし、クレアの屋敷も歴史的美術館のように豪華です。
行きつけレストランの食器類や、クレアにプレゼントする洋服やジュエリーなどもすべてが高価そう・・・。
そしてやはり女性肖像画の部屋は圧巻です。
この秘密の部屋のシーンで流れる音楽も、より神々しさを引き立てています。
一流の雰囲気を味わえるのも、この映画の見どころのひとつではないでしょうか。
画像引用元:NAJS Associazione culturale di Firenze
ヴァージル役を演じたジェフリー・ラッシュは、オーストラリアを代表する俳優です。
映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのキャプテン・バルボッサ役が一番印象的で、その他有名なのは「英国王のスピーチ」でスピーチ矯正の専門家ライオネルを演じています。
元々好きな俳優なため、ヴァージルにはどうしても感情移入してしまうので、本作はやはり残酷な結末に感じてしまいますが、見応えのある作品でした。
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アイキャッチ画像引用元:The Japan Times
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