Appleは2021年9月1日にApp Storeに導入するアップデートを発表しました。
2022年初めに適用される予定で、アプリケーションのデベロッパーはアプリ内に自社ウェブサイトへのリンクを設置できるようになります。
今回は、このアップデートによるApple課金の条件が緩和されることについて解説していきたいと思います。
Appleのアップデートについて
2021年9月1日、Appleがプレスリリースで、以下の内容を発表しました。
文章が長いので、つまりどういうこと?と言う人はスクロールして解説から見てください。
日本の公正取引委員会によるApp Storeの調査が終結
Appleは、来年初めに世界中の「リーダー」アプリケーションのデベロッパが、アカウントの設定と管理を行うために外部ウェブサイトにリンクすることを可能にします
カリフォルニア州、クパティーノ
Appleは本日、公正取引委員会による調査を終了することになるApp Storeに導入するアップデートを発表しました。このアップデートにより、「リーダー」アプリケーションのデベロッパは、ユーザーがアカウントを設定または管理できるように、アプリケーション内に自社ウェブサイトへのリンクを含めることが可能になります。この合意は日本の公正取引委員会との間でされたものですが、Appleはこの変更を、App Storeで公開されている世界中のすべてのリーダーアプリケーションに適用します。リーダーアプリケーションは、デジタル版の雑誌、新聞、書籍、オーディオ、音楽、ビデオの購入済みコンテンツまたはサブスクリプションコンテンツを提供しています。安全でシームレスなユーザー体験を確保するため、App Storeのガイドラインでは、デベロッパにAppleのアプリケーション内決済システムを利用してデジタルサービスおよびサブスクリプションを販売することを義務付けています。ただし、リーダーアプリケーションの一部のデベロッパは、アプリケーション内で購入可能なデジタル商品やサービスを提供していないため、Appleは、ユーザーがアカウントを設定および管理できるように、そうしたアプリケーションのデベロッパが自社ウェブサイトへのリンクを1つ設置できるようにすることで公正取引委員会と合意しました。
この変更が2022年初めに適用される前に、Appleはガイドラインと審査プロセスを更新し、リーダーアプリケーションのユーザーがApp Storeで引き続き、安全な体験ができるようにします。App Storeの商取引システムを使用したアプリケーション内課金は、これからもユーザーにとって最も安全で、最も信頼できる決済方法であり続けますが、Appleは、リーダーアプリケーションのデベロッパが購入のためにユーザーを外部ウェブサイトにリンクする場合のユーザーの保護もサポートしていきます。「私たちにとって最も大切なのは、App Storeに対する信頼です。App Storeが大切にしていることは、常にユーザーに安全で安心な体験をお届けし、愛用しているデバイスで素晴らしいアプリケーションを見つけ、利用できるようサポートすることです。Appleは日本の公正取引委員会に深い敬意を表し、これまでの共同の努力に感謝いたします。これにより、リーダーアプリケーションのデベロッパは、ユーザーのプライバシーを保護し、信頼関係を保ちながら、ユーザーが自社のアプリケーションとサービスを設定、管理しやすくすることが可能になります」と、App Storeを監督するAppleフェローのフィル・シラーは述べています。
このアップデートに先立ち、App Storeに導入されるいくつかの変更が先週発表されており、お客様に到達し、価格を設定し、ビジネスを拡大するためのさらなる柔軟性とリソースがデベロッパに提供されます。また、Appleは先週、地域ジャーナリズムと報道機関をApp StoreでサポートするNews Partner Programも開始しています。
本日発表されたアップデートによって、App Storeは、ユーザーとデベロッパーのどちらにとってもさらに魅力のある市場へと進化を続けます。Appleはすでに、世界中のAppleプラットフォームの10億人以上のお客様にソフトウェアを開発して届けるために必要なあらゆるツール、リソース、サポートを、3,000万以上の登録デベロッパに提供しています。出典:https://www.apple.com/jp/newsroom/
Appleが発表したプレスリリースの内容は、要は、「リーダーアプリ」で、コンテンツやサブスクリプションサービスを、アプリ外のWebサイトで購入できるようになる、ということです。
リーダーアプリ:デジタル版の雑誌、新聞、書籍、オーディオ、音楽、ビデオの購入済みコンテンツまたはサブスクリプションを提供するアプリのこと
今までのiOSアプリは、Appleにアプリ審査を通して、合格するとApp Storeに公開され、世の中の人がアプリをダウンロードすることができるというものでした。
ここまではいいのですが、App Storeのガイドラインに、すべての開発者に対してコンテンツやサービスを購入する際に、Appleのアプリ内課金システムを使うように義務付けされ、アプリ内課金する場合に売り上げの30%(※)がAppleに手数料として入るという内容が記載されており、この手数料が高いと開発者や事業者から批判がでていました。
※年間売上100万ドル未満の小規模事業者、サブスクは15%
この手数料を回避するために、事業者たちはアプリ内の課金を遮断し、アプリ外でのサイトでコンテンツを購入できる仕組みを構築するという非常に面倒なことをしていました。
このガイドラインで記載されているアウトリンク(アプリ内で課金に誘導するボタンやリンクを張ること)の禁止は、独占禁止法に違反しているのはではないかとして日本の公正取引委員会は審査していましたが、Appleのアップデートの発表により、日本における公正取引委員会は調査は終了したようですね。
今回のアップデートにより、遅くとも2022年初めから「リーダーアプリ」に限り、アプリ内に外部サイト(自社ウェブサイト)のリンクを1つだけ設置することができるようになりました。
つまり、手数料を取られることのないApple以外のアプリ内課金への導線をつくることができるようになったということですね。
App Storeガイドラインの注意点
今回Appleが発表したい内容だと、すべてのアプリに適用されるわけでなく、リーダーアプリに限定される内容です。
リーダーアプリ以外は、引き続き、Appleのアプリ内課金を利用することが義務付けられるようなので、注意が必要ですね。
App Storeアップデートに対象外となったジャンル
上記で述べたように、リーダーアプリはアプリ内に外部リンクを設置することができるようになり、音楽・電子書籍・動画・ニュースは外部決済が容易になり、手数料30%回避の手段が広がりましたが、スマホゲームは対象外のようです。
公正取引委員会は以下のように回答しています。
「音楽配信、動画配信、電子書籍といった市場は著作権の負担が大きい。著作権料負担が販売価格の6~7割を超えることがある。30%の手数料を乗せるとほとんど利益がでない。アプリ開発者の努力で圧縮することが難しいため着目した」
出典:Apple調査に5年、公取委「時に激しい議論」 会見要旨: 日本経済新聞
著作権料が高い業界を優先した形で、一件理にかなったように見えます。
しかし、今後スマホゲームが対象外から対象となるかについては明言していないようなのです。
Apple側もスマホゲームの手数料収入はなくしたくない部分であったようで、公正取引委員会とAppleがお互いに譲歩した結果が今回の結果なのでしょう。
スマホゲーム業界からはなぜなんだと声が上がることは間違いなさそうですけどね。
ちなみになぜApple側がスマホゲームの手数料収入をなくしたくないかというと、手数料収入のうち、約7割の収入がスマホゲームによって稼いでいるからです。
手数料の高さは「Apple税」とも言われることもあるくらいの大きな収入で、Appleとしては、7割の利益を守りつつ、公正取引委員会の調査終了という結果を得たので1番いい着地だったのではないかと予測もできますが。
実際Appleの勢力は強くなっており、各国からマークされていたことは間違いないので、公正取引委員会の調査に対して現状の手数料体系を一切崩さないわけにはいかなかったので、公正取引委員会に成果をもたらしつつも、スマホゲーム領域を手元のカードに確保したAppleは実際にんまりかもしれないですね。
App Storeの制限緩和における7つの主要優先事項
ちなみに、Appleは2021年8月26日に先立って、App Storeにおける柔軟な価格設定や、App Store以外での支払いオプションを認めるという方針を発表し、7つの主要優先事項を決定しています。
1. 前年の収益が100万ドル以内のデベロッパを対象に、通常30%の手数料を15%にする「App Store Small Business Program」を3年間継続
2. App Storeの検索機能を、ダウンロード数、スター評価、テキストの関連性、ユーザー行動シグナルなどの客観的特性に基づいたものにする
3. Appleは、デベロッパがメールなどのコミュニケーションを使ってiOSアプリケーション以外の支払い方法の情報を共有できることを明確にする
4. デベロッパがサブスクリプション、アプリケーション内課金、有料アプリケーションで利用できる価格帯の種類を従来の100未満から500以上へと拡大
5. Appleは、不当だと思われる扱いに基づき、デベロッパがアプリケーションの却下に対して不服申し立てができる選択肢を維持する
6. App Storeについての透明性レポートを毎年作成。却下されたアプリ数、無効化されたユーザー、デベロッパアカウントの数、検索クエリと検索結果に関する客観的なデータなどの統計情報を共有する
7. 小規模な米国のデベロッパを支援するための基金を設立出典:Impress Watch
Apple課金以外を認めていたり、現状のApp Storeにおける制限を緩和しています。
Apple課金以外でコンテンツなどが購入されれば、Appleへの手数料支払いはしなくていいようですね。
長くなりましたが、これからのAppleの動向は世界的な規模で影響を与えることになるので、注目してみていきましょう。
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