2021年夏、細田守監督の新作長編映画『竜とそばかすの姫』が公開されました。
毎回話題を集める細田守監督作品ですが、今回は映画『竜とそばかすの姫』の作品情報やあらすじをご紹介します。
『竜とそばかすの姫』の作品情報
公開年 :2021年
製作国 :日本
ジャンル:青春
上映時間:2時間1分
監 督 :細田守
メインキャスト:
すず/ベル・内藤鈴 – 中村 佳穂
しのぶくん・久武忍 – 成田 凌
カミシン・千頭慎次郎 – 染谷 将太
ルカちゃん・渡辺瑠果 – 玉城 ティナ
ヒロちゃん・別役 弘香 – 幾田 りら
すずの父 – 役所 広司
竜 – 佐藤 健
『竜とそばかすの姫』のあらすじ
ストーリー
自然豊かな高知の田舎に住む17歳の女子高校生・内藤鈴(すず)は、幼い頃に母を事故で亡くし、父と二人暮らし。
母と一緒に歌うことが何よりも大好きだったすずは、その死をきっかけに歌うことができなくなっていた。曲を作ることだけが生きる糧となっていたある日、親友に誘われ、全世界で50億人以上が集うインターネット上の仮想世界<U(ユー)>に参加することに。<U>では、「As(アズ)」と呼ばれる自分の分身を作り、まったく別の人生を生きることができる。歌えないはずのすずだったが、「ベル」と名付けたAsとしては自然と歌うことができた。ベルの歌は瞬く間に話題となり、歌姫として世界中の人気者になっていく。
数億のAsが集うベルの大規模コンサートの日。突如、轟音とともにベルの前に現れたのは、「竜」と呼ばれる謎の存在だった。乱暴で傲慢な竜によりコンサートは無茶苦茶に。そんな竜が抱える大きな傷の秘密を知りたいと近づくベル。一方、竜もまた、ベルの優しい歌声に少しずつ心を開いていく。
やがて世界中で巻き起こる、竜の正体探し(アンベイル)。
<U>の秩序を乱すものとして、正義を名乗るAsたちは竜を執拗に追いかけ始める。<U>と現実世界の双方で誹謗中傷があふれ、竜を二つの世界から排除しようという動きが加速する中、ベルは竜を探し出しその心を救いたいと願うが――。
現実世界の片隅に生きるすずの声は、たった一人の「誰か」に届くのか。
二つの世界がひとつになる時、奇跡が生まれる。
『竜とそばかすの姫』の個人的な感想
サマーウォーズに似ている世界観?!
出典:Yahoo!映画
『竜とそばかすの姫』では、仮想世界「U(ユー)」の中で「As(アズ)」と呼ばれる自分の分身をつくります。
それに対して『サマーウォーズ』では、仮想世界「OZ(オズ)」の中で自分のアバターをつくるという設定です。
どちらも仮想世界の中に自分自身のアバターや分身をつくるという点においては、似たような世界観であるなと感じました。
しかし、ストーリーとしては、『サマーウォーズ』のテーマが「家族の絆」であるのに対して、『竜とそばかすの姫』では、傷ついた少女が未来に歩みだす勇気と希望を描いた物語なので、テイストは異なり、まったく別物の映画として楽しむことができました。
美女と野獣を思い出させるシーン
出典:2021 スタジオ地図
物語が進んでいくと、城にこもる竜とその竜の苦しみを理解して、助け出したいベルが描かれており、その二人の出会いの演出のシーンが、
まるで『美女と野獣』のようだな感じました。とても美しいシーンなのですが、これはパクリなのではないか?!と思うほどです。
ちなみに『美女と野獣』は城に暮らす孤独な野獣と、彼を恐れながらもその美しい心に惹かれていく美女の恋模様を描いた作品です。
あとで調べてみると、細田守監督は以下のように発言していました。
「今回は映画を作るうえで一番初めの発想が“インターネットの世界で『美女と野獣』をやったらどういうことになるか”というものでした。インターネットっていうのは二重性というか現実と虚構の部分を併せ持っていて、『美女と野獣』も二重性を持った作品ですよね。18世紀に書かれた物語ですけど、現代の日本でインターネットを介して表現できたら、どんな恋物語になるのか、どんなロマンスがそこにあるのか。『美女と野獣』が大好きなので映画にできて光栄、幸せだなと思っております」
参考:細田守監督インタビューより
これを見ると納得ですね。
そもそも似ているなと思ったのは当然で、『美女と野獣』をモチーフにしていたからなんですね。
現代版の美女と野獣という気分で観るのもいいでしょう。映像や音楽が特に美しいので、ぜひ注目して観てほしいシーンです。
出典:2021 スタジオ地図
歌姫ベルの振り付けは、コンテンポラリーダンス界で著名な振付師の康本雅子が担当しているそうです。
モーションキャプチャーを利用しており、ベルの動きの表現1つ1つまで考えられていることがわかります。
竜の正体と過酷な環境
出典:2021 スタジオ地図
竜の正体は実際誰なのかというミステリー要素があり、ストーリーはとても見応えがあります。
物語の終盤~クライマックスにかけて、竜の正体は実の父から虐待をうける兄弟の兄・恵ということがわかります。
現実世界の影響を受けるUの世界で、弟を必死に守るために虐待から堪えている恵の潜在意識が反映され、竜はとても強いAsとなっていたわけですね。
また、竜の声優を佐藤健が担当していることでも話題になりました。
弟を守る兄の姿は痛々しく、なんてひどい父親なんだと誰しもが思ったことでしょう。
すずはなぜ一人で助けに行く?
出典:2021 スタジオ地図
竜の正体が実の父から虐待を受ける兄弟の兄・恵であることがわかり、虐待されるところを画面越しに目撃したすずは、いてもたってもいられずに高知から飛び出します。
すずの周りにいた大人たちは駅まですずを車で送るまでは良かったのですが、なぜかすず一人だけ助けに行かせたときは「えっ?」ってなりました。
虐待は非道な行為ですし、そんな危険な場所に女子高生を一人放り込むのは危険すぎると思ったので絶対付き添ったほうがいいじゃないかと思ったんですけどね。
おそらくこのシーンで伝えたいことは、
すずの母が川に飛び込み亡くなってしまったことを、SNS上で「他人の子供を助けて死ぬことが無責任」「善人ぶっている」と匿名でたたかれたシーンに対して、
「誰かを救う行為や行動に批判される筋合いはなく、ましてや匿名で批判することなんてありえない」
というメッセージ性をこめていて、SNSが発達したからこそ生じている問題をうまく表現しているなと感じました。
途中まで協力してくれているしのぶくんやルカちゃんたちも何もしていないように見えてしまい、彼らは協力はすれど、批判しているわけではないので、このシーンにいれなくてもよかったかな~というのが個人的な意見です。
すずと大人だけの構図を用意してればよかったかなと思いますが、メッセージ性はすごく伝わるシーンでさすがだなと感じました。
ジャスティンの正体
出典:2021 スタジオ地図
正義の使者を名乗り、仮想世界「U」の中で人気のあるジャスティンという「As」は、竜を危険なアバターとし排除しようとしていますが、このジャスティンのオリジン(正体)は、恵の父であったのではないかと思います。
特に作品の中では正体が明かされているわけではないですが、ジャスティンは「U」の秩序の乱れを正し、自身が悪であるとしたものに対して、アンベイル(現実世界の正体をさらす)し、ネット上でリンチし、社会的抹殺を行っています。
彼にはスポンサーのような企業もついている描写もあり「U」の中で高い人気を誇りますが、自分の目的のためには手段を選ばず、暴力的な側面もあります。
「世間の前では良い姿だが裏の顔がある」という観点で、登場人物に照らし合わせると、似たような人物が恵の父というわけです。
ニュースで取材にこたえるときは良い家族を演じてはいますが、実際は子供たちをルールで縛りつけ、虐待しているというところがジャスティンのあり方と酷似していますよね。
ラストにかけて、ジャスティンはベルをアンベイルし、ベルのオリジン・すずの姿をさらすことになりますが、その姿ですずは絶唱し「U」内でアンベイルされた後も人気を勝ち取ることに成功しました。
恵とトモくんを救うためにすずは彼らのもとまでリアルで会いに行きます。現実世界で立ち向かってきたすずに対して、恵の父はすずの顔をひっかき、血が流れ落ちるほどの傷を負わせたのにもかかわらず、それでも一歩も引かないすずに恐怖を感じ、逃げ出します。
すずがネットの匿名性を捨て、ジャスティンのスポンサーをも退けさせたことや、「U」の世界で実際にベル=すずの姿を目撃しているからこそ、恵の父はすずに対して恐怖を感じ、逃げたと推測できるので、やはりジャスティン=恵の父であると考えられるわけですね。
映像と音楽がすばらしい
出典:2021 スタジオ地図
細田守監督作品は年々、映像のクオリティがあがっていると個人的に思いますが、『竜とそばかすの姫』も期待通り、映像がとても綺麗でした。
映像美に加えて、本作でもう1つ魅力的なポイントは、壮大で美しい魅力的な音楽です。
主人公・すずの声優をアーティストである中村佳穂が担当し、非常に独特な音楽性で魅惑的な歌声に誰もが聴き入ってしまうと思います。
実力派アーティストが主人公の声優を担当することも驚きでしたが、本当に世界観にぴったりで、作品の良さをめちゃくちゃ引き出していました。
また、すずがUの世界で自分のAsをアンベイル(正体を明かす)した際に、まわりのアバターたちも一斉に歌いだすシーンがあるのですが、この歌声は国内外から集めた3000人以上の歌声をミックスして編集しているそうで非常に手間のかかった演出となっており、それゆえにあそこまで引き込まれる感覚があるのかなと感じました。
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